木村繁之
現代アートの絵画を表現方法という観点から眺めた場合、「具象絵画」、「半具象」、そして「抽象絵画」の三つに分かれます。
もちろん作家ごとに制作に対する考え方、表現方法は異なりますので、これらはあくまでも便宜的な分類でしかありませんが。
この分け方で言えば木村繁之の版画や立体作品は風景、動物、小鳥たちが登場するという意味で「具象」の中に入りそうですが、それは現実に私たちに見えている世界ではなく、作者の空想の世界、または夢の中に現れる異次元の世界だと言えます。それは、私たちが子供の頃に両親から読み聞かせてもらったアンデルセンやグリム童話、「ぐりとぐら」、「星の王子様」等の優れた物語の世界に通じるものがあるかも知れません。
幼少の頃にこれらの物語の世界にわくわくした経験をお持ちの方も多いと思いますが、私たちが氏の作品に魅かれるのもそのような体験に共通する何かがあるのかも知れません。
お好きな抽象作品を飾ってその形と色を楽しむことは絵画鑑賞のオーソドックスな方法としてぜひお薦めしたいところですが、時には木村繁之の版画や立体作品をリビングや書斎等ご自分のお好きな場所に飾って、氏が夢の中で訪れた不思議で魅力的な異次元の世界を追体験して頂くのも優れたアートの楽しみ方ではないでしょうか?
以下に以前作家から寄せられた作家のことばから一部を引用させて頂きます。
【制作への考え】
版画は自身をひとごとのように眺め
育ってゆく作品の粗熱をとりながら進んでゆきます
そのような間接表現制租作を続けていると絵が描きたくなります
20年くらい前から平面と立体作品の制作を隔年で続けておりました
今年は版画か絵画、翌年は彫刻というようにです
立体作品は五種類の陶土を組み合わせて釉薬を使わず1200度で焼成した
彫刻で、この10年は人物像が多くなりました
手の中で立ち上がるかたちは版画制作とは別の欲求を満たします
陶の表現に飽きてきた昨年からは小さな木彫を作っております
【伝えたいこと】
絵は触媒のようなもの
眺める方の内に涌き上がる不確かなものが僕の絵です
コンセプトはなく主たる画題もなく、さして伝えたいこともなく
絵の中に短い言葉そのままを置いているようなもの
画廊の壁に並んだ言葉が繋がり眺める方の文章が生まれるでしょう
絵は画題モチーフになにが描かれているか
なにがなされている状態なのかを説明することではなく
描かれていることから生まれる気配のようなもの
その絵柄から引き出される個人的な記憶や情感を引き出すということが肝要と思います
そのことにより絵は見る者の身に沁み込み思い巡らせ、見る快楽を覚えます
近年は作った絵が自身から離れてゆくような感覚があります
【好きなこと】
18年ほど前から登山を始めました
テントと食料を背負ってほとんどひとりで出かけます
薄布一枚隔てて眠る山の夜は裸で森にいるような心持ちです
3000mの山は非日常です 冷たい肌や微かな音や灯のない夜は格別
身の安全と天候に緊張が続くのも普段の生活にはないこと
仕事場が山梨にありますので八ヶ岳は日帰りで登ることが出来、
季節が過ぎてゆく山の風景を楽しめます
ひとのいない森の中を歩けば身体の隅々まで使っている実感があり
山を降りればご飯が美味しく風呂がありがたくビールも旨い
【生活】
小学生並みの早寝早起き 陽が出る時間に目が覚めます
若い頃から制作は早朝から昼までがたいせつで午後は付け足し
仕事場の前は森の木立 遠望する南アルプス
よって夕方4時になれば食事をしながらビールを呑みます
日暮れを眺めながら飽きず
呆然と過ごす時間を待つ一日です
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