アートの効用
「モノ」が商品であるためには、その「モノ」に効用がなければ商品として認められることもありませんし売買されることもありません。アートの世界においても、アートに効用があって商品としての市民権が確立されていなければそもそも画廊経営そのものが成り立ちません。 その意味でアートに効用があるのか、あるとすればどのような効用なのかというテーマはアートに携わる人間にとって常に考え続けなければならない課題です。
【購入理由】
ではクライアントがどのような理由でアートを購入しているかを考えてみたいと思います。
1.趣味として
野球やサッカーなどのスポーツであれ、また、音楽、映画、演劇であれ、あるいは何かのコレクションであれ、人にはそれぞれ固有の趣味があります。アートの世界においても、アートを集めている方たち中には、「この方は本当にアートが好きなんだなあ!」と思えるような方がたくさんおられます。
2.インテリアとして
アートをインテリアとして、ホテル、病院、老人施設、住宅展示場やマンションのモデルルーム、その他各種ショールーム、オフイス、個人邸などに購入するケースは、上記の「趣味として」と並んで購入理由の中でも大きな比重を占めています。
3.企業文化の質を高めるためのツールとして
これは、個人よりも企業(会社)に見られる理由または動機です。一部の企業にはアートをより戦略的な目的で収集しているところがあります。良質な作家の作品を所有しそれを内外に公表することにより、企業のさらなるイメージアップを意図するのです。 趣味やインテリアという発想を超えて、自社の企業文化の質をより高めるための強力なツールとしてアートを活用するというものです。アートを効果的に活用している企業の例としては資生堂やサントリーなどが挙げられます。
4.資産として
1980年代後期のバブル期においては、すべてのアートに資産価値があってアートの価格が日々上昇していくものだと多くの人々が信じていた時代がありました。そのような考えは儚い幻想に過ぎなかった訳ですが、しかし、現在において、アートがすべて資産価値を持たないか、というと決してそうではありません。 このことは、今でも多くの有名作家の名品が、国内外のオークションハウスや画廊において高値で売買され、その資産価値を保っている事実が証明しています。そして、作品によっては一般の金融資産の価格上昇率をはるかにしのぐものも確かにあります。
ただ、これはごく限られた一部の作品に対してのみ言えることです。趣味やインテリアとしてアートを購入する際には、その作品に過度な資産性を求めない方が賢明です。
【アートの効用】
商品の効用には人間の肉体面により多く作用するモノと精神面にその作用を及ぼすモノとがあると思います(肉体と精神は一体のものですから、これらを分けて考えるのもおかしいことかも知れませんが)。アートの効用を上記の分け方で見た場合、当然のことながら精神面にその効用を発揮します。
一つ目の効用として考えられることは、アートが見る人々に精神的な快感を与えると言う側面です。これは美しい音楽を聴いたときの精神的な快感とよく似た感覚だといえます。美しいアートを見て感動する、心が豊かになる、落ち着く、心が和み、安らぎ、寛ぐ、癒される・・・等々の感覚の根底にはこの精神的な快感が存在していると思われます。
二つ目の効用は、アートの持つ触発効果と言う側面です。アートに触れることによって人々が触発され新しい視点や発想力を獲得する上でアートの果たす効用を意味します。
三つ目の効用は差異効果です。良質な作家によるアートを所有している企業に対して「さすがにここの会社は飾ってあるアートからして美的センスが違う」と顧客が感じることにより、他社とのイメージ上の差異化が行なわれそのことが企業のさらなるイメージアップと販売促進に寄与することを期待するものです。 尚、ここでは企業の場合を想定して書きましたが家庭においても同様のことが言えると思います。家庭内の文化の質を高める上においてもアートには効用を発揮すると思います。
物質的な豊かさを追求した20世紀を経て21世紀は文化の生み出す力がより大きな価値をもつ時代になることが予測されますので、アートの効用がさらに人々に理解され認知されていくことが期待されます。
ギャラリーファインアートのホームページ下記からご覧ください。